農をささえる(1)HMカンパニー 農業専門の人材派遣
1月18日 日本経済新聞からの抜粋+一部編集です。
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農を支える(1)HMカンパニー―農業専門の人材派遣
安平町で大豆や小麦、ビートなどを栽培する谷口龍治さんの農場で昨年9月、地元では普段みかけない複数のスタッフがカボチャの収穫作業に励んでいた。
札幌市の人材派遣会社、HMカンパニーが送り込んだ派遣労働者だ。
「近所で集められればいいが、数日間だけ来てもらうのは難しい。」
数年前からカボチャ栽培に力を入れる谷口さんにとって、悩みの種は収穫時の人手の確保だった。
作業は当日の天候にも左右される。
派遣の場合
「急に頼んだり、キャンセルできたりする点はありがたい」
と評価する。
◇道内で1000人登録
HMカンパニーは農業に特化した異色の派遣会社として現在、札幌圏と旭川圏を中心に約1000人の登録者を抱える。
雑草取りからトラクターの運転まで引き受ける仕事は様々。
農業協同組合や農業生産法人らと基本契約を交わし、繁忙期には1日最大150~200人を派遣する。
林英邦社長は
「『とにかく人に困っている』という声が多く寄せられる」
と話す。
農村部では高齢化や後継者不足で、かつてのように繁忙期に人手を融通し合うことは難しい。
農地の集約で農家の大規模化は進むが、
「機械だけでは対応できず人の手が必要な作業は依然多い」。
同社の強みは農家のニーズに合わせたきめ細かな対応にある。
派遣は1人から可能。
日数は1日最低4時間から長期の住み込みまで柔軟に応じる。
派遣当日の悪天候が予想される場合には、前日午後6時までに連絡すればキャンセル料はとらない。
「大型特殊免許を持っている人はなかなか手配できない。助かった」。
江別市でレタスやブロッコリーを栽培する山田富彦さんは昨年夏、HMカンパニーの派遣を初めて利用した。
決め手となったのは、フォークリフトや農業機械を操作できる人材をすぐに確保できること。
◇給与に能力反映
登録者は農作業の経験がない人から熟練者まで幅広く、求人の内容に応じて振り分けている。
優秀な人材を確保するため、2年ほど前から経験値の高い人には給与を上乗せする制度を整えた。
登録者のスキルや過去の実績などを勘案し、同じ作業でも最大1・5~2倍の時給格差が付く仕組みだ。
林社長によると2009年に事業を始めた当初は、農家の間で
「そもそも人材派遣というサービスへの概念が薄かった」。
実績を地道に積み上げていくことで、取引先を徐々に拡大。
料金や仕事の割り振りなどへのクレームも年々減っているという。
昨年からは自治体と連携し、新規就農者の育成に取り組み始めた。
人材サービスとは別に、林社長自ら漬物の全国コンテスト「T―1グランプリ」を企画するなど、農業分野での事業領域を広げつつある。
今後の課題は派遣事業での登録者の拡大だ。
夏から秋にかけてのピーク時にはすでに
「人の確保が追いつかない状態」(林社長)。
求人募集を道外に広げることを検討中という。
人材管理、コスト管理の両面で経営手腕が試される。
全国一の生産高を誇る北海道農業。
強さの源は生産者ばかりとは限らない。
農を支える道内企業の挑戦や事業モデルに迫る。
▼就農人口
北海道の農業就業人口は2011年時点で前年比2・4%減の10万8700人。
1990年には20万人を超えていたが、この20年間でほぼ半減した。
年齢別の構成比をみると65歳以上の比率が34%、60歳以上では49%に上る。
一方、道内の新規就農者は年間600~700人ほどにとどまる。
Uターン組と新規の学卒就農者がほぼ半数ずつで約9割だ。
農地の集約に伴う大規模化でここ数年、道内の農業生産高は大きく落ち込んでいないが、担い手不足は全国と同様の課題となっている。
収穫時期など繁忙期を中心に人材を派遣する
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農業への人材派遣。
あまりメディアに取り上げられることは少ないかもしれませんが、様々な所で派遣は使用されているのですね。
人材派遣に関しては、法改正も重なって色々な問題を抱えています。
人材派遣も、業種によっては非常に重要なものです。
製造業では特にそうですが、やはり企業の競争力の源泉にもあります。
今後の派遣業界の「あり方」に関して、注目していく必要がありそうです。