大手企業の人事部の話は、中小企業では通用しない事も少なくない:人事目線での現場のリアル
適性検査を用いて新卒・中途採用や組織変革を支援していると、様々な人間模様が見えてくるもの。
理想と現実、本音と建前、机上の理論や綺麗ごとなど…。
経営者の思惑と現場の気持ちが乖離している事なんて、日常茶飯事。
今回は「大手企業の人事部の話は、中小企業では通用しない事も少なくない」という話。
人事目線での現場のリアルを、代表の尾登がお伝えします。
雑誌やネットのメディアを通じて、大手企業の人事部の方が情報を発信していることがありますよね。
私個人としても、そのような記事には目を通し、大いに参考にさせてもらっています。
中小企業の経営者としても、学ばなければならない事がたくさんあります。
一方で、正直疑問に思う点もあったりするんです。
大手企業と中小企業では、当然所属している人材の質は違います。
正社員だけではなく、派遣社員やアルバイトとして考えても、やっぱり違います。
言っている事は素晴らしい事だし、目指すべき理想の形なんだろうなぁとは感じていますが、そううまくいかないことも多々あるのですよね。
人によっては、
「ああ、大手企業でしか働いた事ないんだろうなぁ」
「人事畑を歩いてきた人で、現場の事はあまり知らないんだろうなぁ」
「優秀な人材に囲まれていればこそできるけど、一般レベルの人材しかいない中小企業にとっては、無理な話だろう」
という感想を持つ事もあります。
例えば、ミッションやらビジョンやら。
優秀な方や大学で経済学を学んでいた方ならば、当然聞いた事があり、意味も理解している事だと思います。
それを知っているとふまえた上で、コメントしている場合が多いですよね。
では、中小企業ではどうか。
全員が全員、知っているわけではない…というのが現実です。
中小企業には、様々な従業員がいます。
優秀な方も、当然いるでしょう。
一方で、大学を出ているのに新聞を一切読まない者や、業務外の情報をまったく入れようとしない者も少なくありません。
世の中の情報を入れずとも、与えられた仕事をこなすだけで仕事として成立してしまう、給料を貰えてしまう…というのも、大きな理由なのだと思います。
そういった業務も、世の中にはたくさんあるのですよね。
パチンコ業界なんかはそうでしょう。
上層部は、世の中の流れや様々な情報を収集しているかもしれません。
しかし、店舗内にいる従業員には必要のないことばかり。
ミッション・ビジョン、株価、資産運用、法律改正、AIなどなど…。
必要ないは言いすぎだとしても、興味がなければそんなこと気にも留めません。
ミッションやらビジョンやら、会社の方向性を従業員に指し示し、それがモチベーションアップにつながるのは、ほんの一部の人間なのです。
会社の方向性に興味があるのは上辺だけ、もしくは一部であり、ほとんどの者は興味ありません。
自分の事で精一杯。
それが悪い事とは思いませんけどね。
当然と言えば、当然のことかもしれませんが。
ミッション・ビジョンと言うのは、経営者の夢であり、やりたいこと。
従業員は、いわば他人の夢を共に追いかけているのですから。
100%自分のやりたいことと合致するなんて、そうそうありません。
本音の部分では、有名だから、カッコイイから、安定しているから…という理由で入社した方も少なくありません。
これは別記事にしますが、そんなことはない、会社のミッション・ビジョンに共感していると感じている方でも、本当の意味で行動に移せる人は限られています。
ミッション・ビジョンを達成する為に、自分にかかわる色々な事を犠牲にできるかどうか…ということですけどね。
プライベートを犠牲にしてまで、追いかけることができるか…ということです。
そうでなければ、上辺だけの感情にすぎません。
当たり前のように使われている、ミッション・ビジョン。
大手企業であれば多くの方が理解しているかもしれませんが、中小企業ではそういうわけではありません。
大手企業の人事部の方が発している情報は、全ての会社に通ずるものではありません。
特に、中小企業にとっては。
それは、ミッション・ビジョンに限る話ではありません。
理想を追求するには必要な考え方かもしれませんが、人材の質が違うのは至極当然の話。
経営者の方は、大手企業の人事の方の話を鵜呑みにせず、自社の人材・組織状況を冷静に見つめた上で、参考にすべきかと思います。