東芝の不適切な会計処理問題を人事の側面から見てみる…「高すぎる目標設定:蓄積されたプレッシャーの行く末」「究極のトップダウン体制」などが数ある要因の1つ

人事ニュース

東芝の不適切な会計処理問題。

経済界に大きな激震が走りましたよね。

日本を代表する大手企業である東芝が、不適切会計…。

 

そもそも、東芝問題とは何なのか。

 

東洋経済オンライン:東芝「不適切会計」とは、何だったのか

 

東芝不正問題②

 

東芝不正問題

 参照: 東洋経済オンライン 2015年8月2日

 

ライブドアやオリンパスとの違いを比べる記事やブログも結構ありますよね。

 

東芝、不正1千億円超でも”甘い”処分?ライブドアは”たった”53億円粉飾で経営陣逮捕

東芝問題「不適切」か「不正」か、オリンパス上回る規模、ミスでは済まず

 

詳細は、記事をご覧下さればと思います。

 

今回の件は、一筋縄ではいかない様々な要因が絡み合っているのだと思います。

この事件がおきた要因の一つには、間違いなく「人事」「組織」が関わっているはずですよね。

人事という側面から、東芝問題を考えてみたいと思います。

 

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 ◇収益改善目標「チャレンジ」、高すぎる目標設定

   →プレッシャーによって追い込まれ、不正に手を染めてしまった

 

 ◇究極のトップダウン体制、上司の指示・命令は絶対であって意見をする事はできない

   →不正に気付いたり、違和感を感じても、それを上司に伝える事ができない体制

 

 ◇いわゆる「大企業病」、心の”甘え”や”緩さ”が出てしまった

   →自分の任期期間だけ問題なくこなせればそれで良い…と考えていたのでは

 

 ◇国の基幹に関する仕事をしているという自負

   →何があっても、自分たちは国に守られている…という気持ちがあったのでは

    自社が潰れれば、日本全体に影響を及ぼす事になり、下手な事はできないと腹をくくっていた

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まず取り上げられるのが、「チャレンジ」と呼ばれる収益改善目標。

当時の西田社長が頻繁に使っていたとされる言葉のようで、かなり厳しい数値目標が設定されていたようです。

当然、それを実行する部下にとっては、相当なプレッシャーだったと想像できますよね。

 

皆さんは、追い込まれたという経験はありますでしょうか。

「窮鼠猫をかむ」じゃないですけど、人間追い込まれると、普段出せない(出さない)パワーを出したりするものです。

そのパワーと言うのは、プラスの意味もありますがマイナスも意味もあります。

 

マイナスのパワーとしては、「普段は絶対にやらないことでも、追い込まれると手を出してしまう」というもの。

どんなに性格が温厚だろうと、精神力が強かろうと、追い込まれたときの人間というのは何をするか分かりません。

それこそ、犯罪に手を染めようとするし、相手に危害を加えようとする。

まさに、死に物狂い。

 

これは、生きている人間であれば、誰しもが持っている本能のようなものではないでしょうか。

 

お金が無くて餓死するくらいなら、コンビニからおにぎりやパンを万引きしよう。

借金の取立てに毎日あうくらいなら、夜逃げしよう。

こんな苦痛を味わうなら、相手に危害を与えてしまえ。

 

極限状態の人間と言うのは、冷静さを失っている為、通常では考えられない判断をするものです。

これは、性格をも凌駕します。

 

そして、追い込まれた人間と言うのは、物事を中・長期的に考えられなくなります。

将来のことではなく、まさに今、この状況を脱するにはどうすれば良いか。

その思考が中心になります。

 

米国9.11事件、崩壊したツインタワー。

燃えさかる炎を避けるかのごとく、人々は飛び降りていきました。

当然、飛び降りた先に待っているのは、「生き残る」という事から最もかけ離れたものです。

生き残る可能性を考えれば、飛び降りるよりも、その場にいた方が確率は高いはずです。

火傷をしようが、呼吸が困難になろうが、助けを待つべきでした。

 

しかし、その苦しさ、精神的プレッシャーに耐え切れず、飛び降りてしまった…。

中・長期的に考えれば、万が一の可能性を信じて留まるべきでした。

飛び降りてしまっては、生き残る事を諦めてしまったと同義であり、万が一にも助かりません。

もちろん、その方の苦しみは想像を絶するものだったかと思いますので、どうするべきであったかは何とも言えませんが…。

 

東芝事件のおきた理由のひとつは、その点にあるのではないでしょうか。

 

人間、余裕がなくなると、その人の人格からは信じられないような行動をとったりするものです。

達成困難な目標を与えられ、意見をする事もできず、プレッシャーを与え続けられる事によって、精神的疲労を抱えてしまう。

プレッシャーを与え続けられた部下は、目標を達成する為にあれこれ手を尽くすも、どうしても到達できない。

 

そこで、頭をよぎる「不正」の二文字。

 

目標を達成せねば、自分のクビがとぶ。

それを避ける為には、結果を出すしかない。

不正をしてでも、どんな事をしてでも、目標を達成しなければならない。

最悪、自分の任期の間だけでもバレなければ良いだろう。

 

こんな話は、何も東芝に限った事ではありませんよね。

自分たちの身近に起きうることです。

むしろ、現在進行形で自分の身に降りかかっている事かもしれません。

 

達成不可能な目標を設定し、プレッシャーを与え続けるのは、得策ではありません。

社内事情により、そのようなやり方をするしかなかったかもしれませんが…。

 

高い目標を設定する事の全てが悪いとは言えませんが、高すぎる目標をかかげた場合のリスクも考慮すべきでしょう。

皆が皆、ソフトバンクの孫社長のようではないし、勢いのある人材ばかりではありません。

当然、高すぎる目標のプレッシャーに押しつぶされたり、チャレンジする前から諦める人もいます。

その辺りの「人心掌握術」が、もしかしたら東芝には足りていなかったのかもしれませんね。

 

ビジネス自体も、国の基幹産業を行っていましたよね。

そこが、ライブドアとの大きな違いでもあります。

 

ライブドアがなくなっても、国全体の影響力は小さい。

しかし、東芝となるとそうはいかない。

原発や半導体を手掛けているわけなので、仮にも倒産してしまったら、その影響は甚大です。

当然、国としては保護するでしょうし、実際東京電力などは保護されましたよね。

そういう心の余裕というか気の緩みというか、何をしても大丈夫であるという、一種の開き直りもあったのではないでしょうか。

 

今回の事件は、人事の側面だけで見ても、起因となったであろう状況が垣間見えます。

もちろんそれだけではなく、外部環境や経営戦略など、様々な要因が絡み合っているのでしょう。

高すぎる目標与えなければならなかったのは、東芝という上場企業の宿命だったのかもしれません。

 

不正をしても、表向きは良くとも、実質的には何も改善されません。

しかし、それは分かった上でそうせざるを得なかったのだと思いますし、将来的に改善させていく心積もりだったのだと思います。

不正に手を染めてしまったのは、最終手段だった…のではないでしょうか。

 

企業と言うのは、当然「ヒト」の集合体であり、「ヒト」によって成り立っています。

役員をはじめ、上司は部下に対してどう接していくべきなのか、絶えず考えていくべきなのだと思います。

 

 

尾登 正幸

ブログ著者:尾登 正幸

埼玉県出身。大学3年生の就職活動期に “人生を楽しむことを手伝える” 仕事での起業を決意。同じ志を持つ仲間と3年後の会社設立を目標として共有し、ノウハウを得るため2006年に人材派遣会社に就職した。2008年12月、仲間と共にRAYERED(株)を設立し、2010年からは代表取締役に就任。ビジョンの共有を核とする人事コンサルティングや、人事適性検査にフィードバックを付けるサービスはリピーターが多い。人事適性検査をフル活用した独自のスキームにより、企業と人のベスト・マッチングを提供している。

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