女性の管理職登用はするべきか否か…「女性を登用すること」が目的になってしまってはいないか

人事ニュース

女性活躍推進法が成立しました。

平成28年4月1日から、労働者301人以上の大企業に対して義務付けられた事があります。

 

厚生労働省:女性活躍推進法特集ページ

プレジデント ウーマン オンライン:女性活躍推進法を含む記事

 

◇ステップ1:自社の女性の活躍状況を把握し、課題分析を行う

 ①女性の活躍状況、②勤続年数の男女差、③労働時間の状況、④管理職に占める女性比率

 

◇ステップ2:行動計画の策定、届出、社内周知、公表する

 ①行動計画の策定、②都道府県労働局への届出、③労働者への周知、④外部への公表

 

◇ステップ3:自社の女性の活躍に関する情報を公開する

 ①自社の女性の活躍に関する情報を公表する

 

自社の女性に関する分析を行い、行動計画を策定し、その情報を公開すると。

なお、目標基準値に到達しない事による罰則は、存在しないようですね。

 

確かに、国際的に見ると、日本は女性の管理職比率が低いですね。

 

女性の管理職比率:世界比較

 

一応、日本の女性管理職比率は、年々増加傾向にありますけれども…。

 

女性の管理職比率:国内

 

国際比較をし、日本が劣っていると、世界に追いつけ!という事で世界標準に合わせようとしますよね。

データを見れば、劣っている事には間違いないので。

しかし、この件に関しては、個人的に色々と思う事があります。

 

 

①何を比較対象にするのかによって、状況は大きく変わる

「女性の管理職比率」という観点から見れば、日本は国際的に劣っているかと思います。

しかし、その増やすべき目的というのは、一旦何なのでしょうか?

 

日本は、世界第3位の経済大国です。

男性社会と言われている現状でも、GDPは世界でもトップクラス。

日本よりも女性の管理職を登用している国はたくさんありますが、経済規模としては日本よりも小さい国がほとんどです。

「経済」という観点から見れば、女性の管理職登用はあまり関係が無いのではないでしょうか?

 

女性を登用すれば、会社が発展する、経済が発展する、日本が世界第1位の経済大国になる為の直接的な理由になる…?

そんなことはないでしょう。

優秀であれば、男性であっても問題ないのではないでしょうか。

問題の本質は、「性別」にあるのではないと思います。

 

何でもナンバー1が良いのであれば、日本の福祉も、福祉の先進国であるスウェーデンやデンマークのようにするべきなのか。

一概に、そうとも言えませんよね。

国には国の事情があり、特徴もある。

素晴らしい事は真似をし、出来るだけ近づけようとするべきですが、限度があります。

何事も、出来る事と出来ない事がある。

 

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スウェーデンでは、給料の約7割が税金や保険として政府から徴収される。

所得税は30%程度、消費税は25%程度というかなりの数字。

国全体で、介護施設にあてる税金に重点をおいている国と言える。

参照:RME 介護ネット

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給料の40%ぐらいが徴収され、残った分から所得税30%が徴収…。

消費税が8%でも大きく話題になった日本、スウェーデンは25%…。

今の日本に、この状況を導入するとしたら、反発は必須でしょうね。

 

ちなみに、上記国際比較を見れば分かりますが、スウェーデンの女性の管理職比率は35.5%です。

 

 

②日本は、中小企業が圧倒的多数であり、中小企業によって成り立っている…大手企業がスタンダードではない

今回の法案は、大手企業がメインです。

大手企業の動きに注力する事は必要ですが、そのまま自社(中小企業)に当てはまるとは限らない。

 

日本は、中小企業の方が圧倒的に多いわけです。

大手企業が導入しているからと言って、それがスタンダードなわけではない。

朝型勤務も、有給休暇消化も、育児休暇制度も、残業ゼロも。

大企業では出来る事も、中小企業では厳しい事がたくさんあります。

 

女性の管理職登用もそう。

300人以下は適用除外ですし、「女性の管理職登用がスタンダードであり常識である」という風潮はいかがなものか。

自社には自社の都合がある。

 

①にもありますが、女性を登用すれば自社が発展する…なんて保証はない。

女性の管理職登用の目的は、「自社の発展」「経済発展」の直接的理由にはなりえないのです。

大手企業がしているから、自社も…と考えるのは危険かもしれません。

よく熟考し、自社にとって必要であると判断した場合は、積極的に女性を登用すればよいのではないでしょうか。

 

 

③キャリアに関して興味のない女性を無理やり引き上げても、パフォーマンスはあまり期待できない

キャリアに興味のある女性であれば、当然のごとく頑張ってくれます。

そういう女性は、積極的に登用してもよいかもしれませんよね。

 

しかし、興味のない女性も当然存在するわけです。

専業主婦に憧れる女性が、44%ほど存在するなんてアンケート結果もあるようです。

憧れはワーママか専業主婦か?

 

また、管理職に就きたくないという若者も増えています。

給料は対して変わらないのに、責任の重さや労働時間だけが増える…。

であるならば、管理職には就きたくない…というものです。

「女性」という理由で無理やり引き上げる事は、組織として優れているとは言えません。

 

 

④立場によって、主張する事は異なる

女性の活用に関しては、当然立場によって変わってきます。

女性に関する記事を取り扱っているメディアであれば、女性を登用する事を肯定するでしょう。

 

そして、女性に関するビジネスを行っている企業…女性専門の人材派遣、人材紹介会社も同じです。

当然、女性の登用が増える事に対する肯定派が増えれば、ビジネスも発展します。

だからこそ、肯定しているのですよね。

 

正直、そこには「人材戦略」「組織運営」に関する見解は皆無でしょう。

マッチングだとか会社の事情よりも、女性を派遣する事、紹介する事を最重要としています。

だからこそ、女性の管理職登用や活用には、積極的に肯定します。

当然の事ですよね、ビジネスに繋がる事ですから。

いわば、女性を登用すべきであると発信する事自体が、企業の広告のようなものです。

 

仮に、男性限定の人材派遣会社・人材紹介会社があったとすれば、逆の事をしたかもしれません。

女性の社会進出は、企業にとってプラスではない!…なんて笑

上記の国際比較などを持ち出し、女性の管理職比率が高くても、経済発展には特に寄与しない…なんて。

そんなもんです。

 

 

⑤異性がいた方が、様々な方面からの意見が出てくる

単純に、男性だけ・女性だけではなく、男性も女性もいた方が、様々な側面からの意見が出やすいですよね。

男性目線と女性目線では、やはり見るポイントが違いますし。

ビジネスにおける様々なアイデアの抽出という観点で言えば、女性の管理職登用は大きなプラスになりそうです。

そういう意味では、女性をあえて登用する事は、必要かもしれません。

 

 

⑥本質的な問題…大手企業:グローバル社会に対応、中小企業:労働力の確保

立場や状況によって、女性の管理職登用の意味合いは変わってくるのではないでしょうか。

大手企業であれば、グローバル社会に対応する為に。

中小企業であれば、主に労働力の確保の為に。

 

特に中小企業にとっては、将来的に日本は人口の減少・労働力の減少が確実視されているわけですから、労働力の確保は死活問題です。

 

グローバル社会への対応という意識よりは、労働力の確保という観点で考えても良いかもしれません。

新卒の学生は、上場企業や名前の知っている企業を中心に就職活動をします。

中小企業の採用活動は苦戦を強いられるわけですから、女性を労働力としてみる必要性は、今後さらに高まってくるかもしれません。

 

会社は小さくとも、女性にとっては働きやすい環境である。

その為に、女性を管理職に登用する、女性を積極採用する。

企業によっては、そのような人事戦略があってもおかしくありません。

 

 

【結論:個人的見解】

「女性を管理職に登用するべきである」とする論調は、全ての企業に当てはまるわけではない。

女性を管理職に登用すれば、売上が上がり、会社が繁栄する…というのは語弊がある。

自社の現状をふまえ、それに応じた対策を取るべきである。

 

大手企業と中小企業では、本質の意味合いが変わってくる。 

 

グローバルに戦っていく企業が、女性の管理職ゼロであった場合、海外企業からダイバーシティへの意識が低いと捉えられる可能性は否定できない。

一方、男性である事が優位性である業界やその他中小企業では、無理やり女性を管理職に登用すると、失敗する可能性は高い。

女性を管理職に登用して成功する場合もあれば、失敗することも当然ある。

 

とは言え、現状必要性が無くとも、「女性の活躍」は今後の日本の大きなテーマであるので、動きや内容は把握しておく必要がある。

世界進出するケースや貴重な労働力として、女性を登用する必要性が出てくる可能性がある。

ヒトはすぐには育たないし、制度や社風によって、女性活用の向き不向きもある。

必要な時期が来た時に速やかに動けるように、シミュレーションや対策は考えておくべきである。

 

 

尾登 正幸

ブログ著者:尾登 正幸

埼玉県出身。大学3年生の就職活動期に “人生を楽しむことを手伝える” 仕事での起業を決意。同じ志を持つ仲間と3年後の会社設立を目標として共有し、ノウハウを得るため2006年に人材派遣会社に就職した。2008年12月、仲間と共にRAYERED(株)を設立し、2010年からは代表取締役に就任。ビジョンの共有を核とする人事コンサルティングや、人事適性検査にフィードバックを付けるサービスはリピーターが多い。人事適性検査をフル活用した独自のスキームにより、企業と人のベスト・マッチングを提供している。

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