関西の中小企業で広がる「70歳まで雇用」…65歳まで雇用を義務付けた改正高年齢者雇用安定法が弾み
65歳まで雇用を義務化、70歳まで雇用する企業が増加…。
改正高年齢者雇用安定法が昨年施行された結果、高年齢者の継続雇用が増えています。
これも大きな枠組みで言えば、人口減少への対策と言えます。
5月2日 日経産業新聞:関西の中小製造業、「70歳まで雇用」広がる…法改正弾み、上限無しも
昨年の改正で65歳までの雇用が義務付けられている事もあり、ここ数年は様々な動きがありました。
定年を廃止したり、再雇用したり、継続雇用したり…。
政府の施策に対し、企業は色々な対策をとっています。
人事と関わりがない方には、あまりピンとこない話かもしれません。
しかし、この65歳までの雇用が義務化、もしくは70歳まで雇用を継続。
この方針は、若年層・中年層の従業員にも、決して影響がゼロというわけではないのです。
それでは一体、どのような影響が出てくるのでしょうか。
1:売上高に対する人件費比率には限界がある
→給与カーブの変更…全体的に賃金が上がりにくくなる、早い年齢で頭打ちにも
当たり前の話ですが、人件費に割り当てる事ができる予算には限度があります。
その中でやりくりをしていかねばならない。
雇用を延長したから、改正があったから。
そのような理由で自社の売上が上がるわけではありませんよね。
つまり、
「これまでと同じ予算内で、雇用を延長した従業員分の給与をまかなう」
という事です。
通常、年齢が高いほど給与は高いものです。
その給与が高い従業員が雇用延長されたら、これまで退職していた層が退職しなくなったら…。
どのような影響が出てくるのでしょうか。
・全体的に給与を下げる、賃金の上昇カーブを緩やかにする
・新卒の採用(新規採用)を抑える
という動きになってくるわけです。
人件費にかけられる予算は限りがあるわけですから、当然の事ですよね。
2:キャリアプランにも変更
→ポジションがなかなか開かず出世にも影響がでる可能性、現場業務の長期化
1にも通じてくる話ですが、高齢層が雇用を継続すると、当然役職も開きづらくなる。
その分、若手の出世が遅くなる・後回しになる可能性も否定できません。
つまりは、現場業務の長期化。
マネジメント層への就任が遅くなったり、そもそも就任自体が難しくなってきます。
つい先日まで想い描いていたキャリアプランを、大幅に変更せざるを得ない可能性が出てくるのです。
3:年上の従業員が部下になる可能性有
→再雇用、もしくは継続雇用された結果現場に回されれば、自分の部下に
とは言え、再雇用・継続雇用された方全てが、そのままのポジションに居座る事は少ないでしょう。
上記にしましたが、通常年齢を重ねれば重ねるほど、賃金は上昇していきます。
当然、若手を起用したほうが全体的に賃金は抑えられるわけですよね。
企業側としては、出来るだけ高給取りの人数を減らしたいと考えています。
そこで、再雇用・継続雇用の方を、現場業務に就かせるのです。
業務内容自体は軽度なものが多く、必然的に自分の部下の位置にまで下がってきます。
要は、年上(高齢の)の部下が出来る…という事が起きてくるのです。
自分より年下の人間が多かった現場に、ぽんと高齢の部下が配属される。
そんな事も当然のように起きているのです。
4:継続雇用されたからとは言え、給与が据え置きというわけではない
→半額、もしくは3分の1にまで減少する可能性もあり
更には、これは再雇用・継続雇用される従業員側から見た話です。
現場配属ともなれば、当然給与は下がります。
半分、ないし3分の1にまで減少する事もあるでしょう。
つい先日まで大手百貨店の事業部長をしていた方が、翌月には銀行の案内員をしているという現実。
つい先日まで本社で管理職として業務をしていた方が、現場の工場勤務をするという現実。
給与は当然、現場レベルになります。
40歳以上は年齢役職問わず、全てリストラ対象である…という企業も存在します。
55歳で役職(部長職)を下ろされ、役職手当もなくなり、現場で勤務する従業員もいます。
終身雇用の崩壊とまでは言いませんが、これまでのように上り詰めたまま引退…という事が難しくなってきました。
55歳なんて、まだまだ現役バリバリですよね。
時代は大きく変わっています。
それは、人事・人材業界も例外ではありません。