ギャンブル漬けのアルバイトでも、出会う人や環境によって人生が変わることもある…という事を経験。
人って本当に面白いもので、分からないもの…ですよね。
と同時に、やはり「出会う人」や「環境」というのは、人生を変えてしまうほど重要であると改めて痛感します。
これは、とあるアルバイトをしている男の子(T君とN君)の話。
彼らは、まともに就職活動をしないまま、卒業しました。
現在、フリーターの23歳。
就職活動もろくに行わず、だらだらと大学生活を過ごしてきたようです。
T君にいたっては、趣味のギャンブルにはまってしまい、半年留年…。
N君にいたっては、父親が病床についている時でも、ギャンブルをしてしまう若者のようです。
これだけの情報を見るだけでも分かりますが、いわば「どうしようもない大学生」ですよね。
自分を振り返ってみると、お世辞にも勉強していたとは言えないので、人の事をとやかく言う資格は無いのですが…。
本人達に危機感はまったくなく、人生なんとかなるだろうと過ごしていたとのこと。
これは後々聞けた事ですが、本人達は多少なりとも「焦り」や「不安」はあったようです。
しかし、それを押し殺してきたようなんです。
見ないフリ、聞かないフリ。
逃げていたのです。
嫌な事から。
ひょんな事から出会い、話を聞くことになりました。
会った当初、当然のことながら子供っぽく見えたと同時に、どうしようもない子達だと思ったのは事実です。
話をすることといえば、趣味のギャンブルの話。
将来のことなどまったく考えずに、アルバイトとギャンブルをする毎日…。
お世辞にも、魅力的な大学生には映りませんでした。
正直、この子達に対して「何を話しても無駄だ」という固定観念がありました。
これまで、人材派遣・人材紹介に携わってきました。
優秀な学生にも、たくさん会ってきました。
今は、適性検査をメインとした採用コンサルティング業務を行っています。
「人」に関しては、人一倍関わってきているので、それなりに人を見る目というのはあると思っていたのです。
しかし後に、それは反省すべき事であると感じました。
ある意味、私のような大人がいるからこそ、彼等は今のような状況になってしまったのかもしれない…という罪悪感さえも感じました。
彼等の話を聞く時間があったので、興味本位で色々と聞いてみたのです。
「やりたいことってないの?」
「夢ってある?」
その答えには、予想通り
「何も無い」
でした。
しかし、T君の口から、こんな言葉が出てきたのです。
「友人が、FE?だかTPE?だか勉強している」
FE?TPE?
一体何のことだろうか?
…もしかして、「FP」のことだろうか?
「ああ、そうです、そのFPってやつです」
最初はこんな感じの会話。
T君は、一緒に遊んでいた友人(悪友)が勉強を始めたので、気になる様子。
彼は元々、好きなことに関してはものすごく熱を入れるタイプのようでした。
好きなギャンブルに関する知識は、驚くほどもの凄い笑
やれ確率はなんだ、ゾーンは何だ、数多くある種類の全て、特徴を詳しく知っている。
やれ〇%だ、〇~〇が当たりやすいだ、とにかく歩く辞書みたい。
「ちょっとでも興味があるなら、勉強してみたら?」
「T君はとことん追及するタイプのようだし、面白いと思うならやってみるといい」
「アルバイトでだらだら過ごすよりも、何でもいいから手を出してみると何かが変わるかもしれないしね」
軽い気持ちで、背中を押したんです。
どうせやるつもりはないだろうと思っていたのですが…。
ところがT君は、次に会った時に参考書を手にしていたんです。
「買っちゃいました笑」
「すげぇ悩みましたけど、勢いで笑」
「こういう参考書買ったの、何年ぶりだろう笑」
なんて言ってる。
正直、予想外の反応でした。
大学は遊びほうけ、
ギャンブル漬けの毎日、
その為に半年留年し、
就職活動もろくにせず、
結果フリーターとして生活しているT君が、
FP3級の参考書を買ったのです!
友人がきっかけかもしれませんが。
購入後、数日してから両親にFP3級を勉強している事を伝えたそうですね。
目を丸くしていたようですし、FPの仕事内容もよく分からない様子だったようですが、
「とにかく勉強する事は良い事だから、頑張ってみなさい。」
という言葉をもらったそうです。
その後、T君には少しずつ世の中の事を話していきました。
将来の日本に起こりそうなこと。
グローバル社会が進行していること。
優秀な大学生は、1年生の頃からでも勉強していること。
その話の全てが新鮮のようで、
「まじっすか?ヤバいっすね…」
なんて話を聞いている。
言葉遣いは置いといて笑、あのT君が世の中の話に興味を持ち、素直に話を聞いているとは!
もっとも、本当に理解しているのかは別の話ですが…。
それだけではありません。
私が好きなマザー・テレサ氏の言葉を教えてあげました。
「思考に気をつけなさい。それは言葉になるから。
言葉に気をつけなさい。それは行動になるから。
行動に気をつけなさい。それは習慣になるから。
習慣に気をつけなさい。それは性格になるから。
性格に気をつけなさい。それはあなたの運命になるから。」
この言葉に、
「あなたの運命に気をつけなさい。それはあなたの子供の運命になるから。」
という言葉を付け加えて、紙に書いて渡してあげました。
T君はその紙を、机に貼っているそうです。
勉強も2ヶ月半で20時間ほどしたそうです。
元々受ける予定だった友人とも、定期的に勉強会をしているそうです。
FP3級の平均合格勉強時間が、80時間というのを調べてあげ、逆算して1日の勉強時間を算出してあげました。
とても感謝され、
「頑張ります」
という言葉も貰いました。
2ヶ月半でたった20時間か…と思うかもしれません。
でも、T君にとっては、大進歩なのです。
2013年は、本を読む時間が0時間だったそうです。
2014年は2ヶ月半たった今、20時間勉強している。
0時間が20時間…。
ものすごい事だと思います。
その一歩が、非常に大事なのですよね。
FP3級、受からないかもしれません。
途中で挫折してしまうかもしれません。
FP3級受かっても、まだまだ社会を甘く見ているので、就職できないかもしれません。
それでも、T君は歩み始めたのです。
小さな1歩かもしれませんが、動き始めたのです。
素晴らしい事ですよね。
T君に言われた言葉が、今でも脳裏に焼きついています。
「こういう事を言ってくれる人は回りにはいなかった」
周りにいる友人とは、当然のことながら真面目な話はしていないでしょう。
もしかしたら、遊びほうけて留年してしまった彼に、ご両親も半ば諦めているのかもしれません。
スーツを着ている社会人から見れば、大学を卒業してもなおフリーターでいる彼らを「ダメ人間」と決めつけ、話を聞こうともしようとも思わなかったでしょう。
それはまさに、自分自身の事だったのかもしれません。
N君も同じようなことです。
T君と同じように世の中の話をしたら、危機感を持ったようで、これではいけないと思うようになったようです。
アルバイトではなく、正社員になるべくハローワークに通いだしました。
N君を半分試すつもりで渡した、堀江氏の書籍「ゼロ」。
自動車教習合宿を行う傍ら、合宿中に半分読んだそうです。
N君も、漫画は省き、2013年に書籍を読んだ時間は0時間。
それが、2週間足らずの間に書籍の半分を読むとは!
学科試験もある事を踏まえても、凄いことではないでしょうか。
彼等には、話を聞いてくれる年上が必要でした。
彼等には、話をしてくれる年上が必要でした。
彼等には、社会の事を教えてくれる年上が必要でした。
そして彼等には、自分の背中を押してくれる人、そして叱ってくれる人が必要だったのです。
きっと、T君やN君のように、本当は危機感を持っているのにやらない・逃げている若者はたくさんいると思います。
「分からないからやらない」「夢を語るなんてバカにされる」「どうせ俺の話なんて聞いてくれない」
そんな事を思っている若者も、たくさんいることでしょう。
彼等には、我々大人が手を差し伸べるべきではないでしょうか。
最低限、自分の息子・娘とは、真摯に向き合うべきですよね。
子供の可能性を信じてあげる事が大事であり、親が子供の将来を狭めてしまってはもったいない。
彼らに関して言えば、決め付けや固定観念によって、話を聞いてくれる大人がいなかったのかもしれません。
自分も、彼らに対してマイナスの感情を抱いていたので、反省すべき部分です。
20代であれば、人生はまだまだこれから。
無限の可能性が広がっていると言えるでしょう。
もちろん、気持ち次第で30代以上だって無限の可能性があります。
社会というのは、厳しいものです。
彼等は特に、人の2倍も3倍も頑張らなければ、夢や目標は達成できないでしょう。
企業もボランティアではないので、「優秀」だと判断しなければ採用しません。
これから先、予想を越える苦労を経験する事でしょう。
元々精神的に弱いからこそ、逃げていたわけで。
今はモチベーションが高い状況ですが、シンドくなれば放り投げてしまう可能性は当然あります。
しかしそれでも、彼等は一歩踏み出しました。
踏み出すことが出来るんです。
彼らのような、いわゆる「ダメ学生」であっても。
これは余談ですが、逆パターンもあります。
モチベーションが高かった人が、環境が変わることによって埋もれてしまう。
優秀だった人が、ひょんな事がきっかけで堕落してしまう。
一生懸命仕事をしていた人間が、チームによってパフォーマンスが全然変わる。
英語のことわざにも、
◇腐ったリンゴは傍らのリンゴを腐らせる
「The rotten apple injures its neighbor.」
とあります。
どんなに優秀な人であっても、周囲の意識が低かったらそちらに引っ張られやすい。
マイナスのパワーというのは、実は非常に強いのです。
自分は大丈夫とは思っていても、そのような環境に身を置いてみると、大半の方は悪影響を受けてしまうものです。
人間というのは、実は思っている以上に弱いのですよね。
孤独を恐れ、同調する心理も働きますので…。
そのような環境にも動じない強さの方がいたとすれば、それはその環境から自ら離れていくと思います。
プラスの方はプラスが好きなので、マイナスの環境には身を置きたくないと思うのですよね。
自分がマイナス・堕落した毎日を送ると、同じような人間が集まってくる。
その環境になじみすぎてしまうと、抜け出すのに時間もかかればパワーも必要です。
最悪の場合抜け出せなくなり、時既に遅し…なんてことも十分ありえるでしょう。
むしろ、そういう方の方が多いように思います。
生活保護から抜け出せない方が多いのも頷けますね。
人に会う事で人生は変わる。
環境によって人生は変わる。
本当にそう思います。
自分を変えたいと思うならば、やはり環境や会う人を変えなければなりません。
彼等はこう言ってくれます。
「尾登さんに会えて、人生が変わりました。」
まだ小さな一歩を踏み出しただけなので大げさですが、それでも転換期にはなったようですね。
私も、様々な方から色々な事を教えて頂き、人生が変わりました。
いつも言っている事ですが、特に上智大学の公開講座。
人というのは、節目節目でキーポイントとなる方と会ったり、そのような環境に身をおくことになるのかもしれませんね。
彼らがどこまで頑張れるのかは分かりませんが、自分の事を信じ、諦めずに突き進んでいくことを願うばかりです。