「パート→正社員」「正社員→パート」…雇用形態を弾力的に、「グレード制度」「社員区分変更制度」 カインズ
5月29日 日経産業新聞からの抜粋+一部編集です。
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カインズ―正社員・パート、弾力的に
ベイシアグループでホームセンター大手のカインズは正社員やパート社員など、働き方を選択できる制度の運用に力を入れる。
パートを正社員に登用するだけでなく、正社員が育児や家族の介護などを機にパートに雇用形態を変えることができる制度を導入した。
業容拡大が続く中、従業員の大半を占めるパートの戦力化と、正社員のつなぎとめの両立を狙う。
「パートでも努力すれば道が開けるとわかれば、今まで以上に責任感を持って仕事ができるという人は多いと思う」。
カインズホーム大胡店(前橋市)で働く藤生智美さん(46)はこう話す。
20年以上同社でパートとして勤務してきた藤生さんは現在、正社員への登用試験に臨んでいる。
カインズは2010年、年功序列色が濃かった人事制度を廃止。
経験と実績に応じた昇格を柱とした「グレード制度」を導入した。
新制度は正社員だけでなく、パートも能力や経験に応じて昇格する。
パートの中から希望者を正社員として登用する体制も整備した。
パートの中でも職域は5階層に細かく分かれる。
藤生さんの現在の肩書は「マスター社員」で、商品管理や現場のパートやアルバイトを管理する上級職だ。
正社員への昇格にはマスター社員として2年以上の経験を積んだ上で、一定の評価を満たす必要がある。
制度導入から2年がたち、今年度中にも藤生さんらが目指す「昇格1期生」が誕生する予定だ。
パートから正社員の昇格だけでなく、新制度では逆に正社員からパートに区分を変えることを可能にしたのが特徴だ。
「社員区分変更制度」は育児休業から復帰する際、フルタイム勤務の正社員でなく、パートとして働くことができる仕組み。
パートから正社員への道筋をきちんと制度化して社員に示すことで、長期的なキャリアプランを描けるようにした
4月には、出産や介護を機に退職した正社員をパートとして再雇用する制度も開始。
子育てが忙しい時期はパートとして働き、時間に余裕ができた段階で改めて正社員に戻るといった働き方も可能になった。
人事部厚生グループの堤雅孝グループマネージャーは
「結婚・出産で辞める女性を減らしたい」
とこうした取り組みの狙いを話す。
カインズは群馬県をはじめとした北関東地方を地盤としているが、近年では東京や千葉県など首都圏への出店を積極化。
7年間で売り場面積を5割近く増やしている。
新卒採用から育てた女性社員が結婚や出産を機に辞めることは、事業拡大を急ぐ同社にとって大きな痛手となっていた。
とはいえ育児をしながらのフルタイム勤務をためらう女性も多い。
そこでパートと正社員を行き来できるようにして両者の垣根を低くすることで、子供の手がかかるうちはパート社員として働き、小学校入学を機に正社員として復帰するという働き方を可能にした。
藤生さんも
「子育てが終わって時間に余裕ができたタイミングでこのような制度ができた」
ため、挑戦を決意したという。
正社員への道筋をつけることで、パート社員の仕事に対する意欲を高める効果も見込めるという。
カインズの従業員数は2月末時点で8965人だが、そのうち正社員が占める割合は25%程度にすぎない。
現場で働くパート社員の意欲を上げることは、競争力向上に直結する。
新人事制度の設計にあたっては、あえて小売業界以外の20社を超える企業の取り組みを参考にした。
堤氏は
「新制度を活用して、女性社員が長期にわたって安心して働ける会社にしたい」
と意気込む。
制度の概要を記した冊子には土屋裕雅社長自らがコメントを寄せた。
競争の激しい小売業界の中で勝ち抜くためにも、現場を支える社員にかかる期待は大きい。
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パート社員から正社員へのみならず、正社員からパートへの道も開く。
そして、育児休業から復帰できるような制度を設ける事により、女性が働きやすい職場環境を創る。
年功序列の制度を廃止し、「グレード制度」を導入。
カインズでは、様々な施策に取り組んでいるようですね。
年功序列を見直す企業もあれば、逆に今だからこそその日本式雇用形態を大切にする企業もある。
どちらかいいかは分かりませんが、少なからず会社の経営理念に沿った形を取ることですよね。
人事制度や給与制度は、いわば経営者から従業員へ向けてのメッセージ。
その制度によって、従業員は会社がどういう立場なのかが分かったりするものです。
成果重視なのか、それとも継続勤務重視なのか。
どのような形を取るにせよ、そこに理念が無ければいけないのは言うまでもありません。