インド、今年も13%前後賃上げ、日系企業、組合対応に苦慮

人事ニュース

6月25日 日経産業新聞からの抜粋+一部編集です。

 

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インド、今年も13%前後賃上げ、日系企業、組合対応に苦慮

 

 

インドでは2012年も現地の従業員の賃上げ率が高い伸びになることが確実となった。

インド日本商工会の調べによると、12年の平均賃上げ率は13%前後と、11年とほぼ同じ水準になる見通し。

労働組合は高い物価上昇率もあって大幅な賃上げを強く求めている。

昨年はスズキの現地工場などでストライキが相次いだが、日本企業にとって労務問題が一段と深刻になりそうだ。

 

インド日本商工会がまとめた賃金実態調査(年1回、対象682社)の結果によると、間接部門勤務者ら「スタッフ」の12年の平均昇給率は13・2%、生産ライン従事者ら「ワーカー」は12・7%となる見通し。

それぞれ13・9%、13・5%だった11年実績とほぼ同程度が見込まれる。

 

特に優秀な人材の不足が目立つスタッフ部門の一般事務職では、11年の月給は3万757ルピー(約4万3000円)にまで上昇しており、12年も大幅な賃上げが必要になる。

11年の一般的なワーカーの月給は邦貨換算で約2万3000円だった。

 

米系人事コンサルティング会社エーオンヒューイットの調査でも、インド企業の12年の平均賃上げ率見通しは11・9%(11年は12・6%)。

調査対象のアジア太平洋の8カ国・地域では中国(9・5%)、フィリピン(6・9%)などを上回った。

少なくとも5年連続で、アジア最大の賃上げ率を記録する見込みだ。

 

日系企業は離職率の高さにも頭を悩ましている。

日本商工会によると11年の離職率は管理職で9%、スタッフで17%、エンジニアで10%。

特にスタッフは10年に比べ4ポイントも上昇している。

 

より高い給与を求めて転職を繰り返していることが背景にあるとみられる。

インドでは労働組合が強硬な姿勢を打ち出している。

 

例えば、同国屈指の巨大企業で、12万人の労働者を抱えるインド鉄鋼公社(SAIL)。

労使間で5年に1度の賃金交渉がこのほど始まった。

組合側が提示したのは30%の賃上げだ。

これは経営側が提示した3倍となる。

 

昨年、ストライキが数度起きたスズキでは労働組合が基本給を5倍に引き上げるよう求めていると地元メディアが報じている。

政府も賃上げを後押ししている。

 

石炭採掘最大手コール・インディアは1~3月期に前年同期比で25%の営業減益に陥ったが、主因は1月に政府が決めた石炭採掘労働者の賃金改定。

人件費関連支出が9割増え、業績に響いた。

 

政府は1996年から労働者向けの最低賃金制度を設け、直近では11年4月に15%引き上げ日当115ルピーとした。

この制度は現在、法的な拘束力がないが、政府が義務化も検討し始めている。

インドではインフレ率が高く、それが組合による強硬な姿勢につながっている。

 

国際通貨基金(IMF)によると、インドの消費者物価指数の上昇率は05年以降、中国を上回り続ける。

足元も10%程度で中国(3%程度)を上回る。

 

中国では人件費が上昇して「世界の工場」としての競争力が低下。

インドでも西部ムンバイでは労働者の基本給が既に中国の広州などを上回っている。

内需が伸び悩み始めている中で、賃上げなどの問題が一段と深刻になれば、外資のインド進出熱が冷え込みかねない状況だ。

 

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記事にもある通り、つい最近は中国の人件費増という現象が起きていました。

トヨタの工場において賃上げ要求が多発している…という記事も、記憶に新しいです。

中国の方の文化の一つなのでしょうが、1円でも高い給与を求めて転職をするのですよね。

 

しかし、多くの日本人はそうではありません。

 

既存の会社で給与が30万円だったとして、転職先が30万1000円だったら転職するでしょうか。

既存の会社で大きな不満が無ければ、転職をしない…という方が多いと思います。

しかし、中国の方はそうではありません。

「1円でも」高ければ転職をしようとするので、定着しないのです。

全てではないにせよ、多くはその傾向にあるようです。

 

異文化経営学会においても、日系企業における中国人の転職率の高さが大きな問題としてあげられていました。

日系企業の人気が、下がっているという話も聞きます。

 

その理由としては、まずは金銭面。

外資系企業に比べ、金銭面での満足感が得られないと言います。

年功序列が邪魔をし、能力が高くても上がりづらいのですよね。

 

また、そこに日本企業特有のキャリアステップの不透明さもあります。

「お前にはまだ早い」

「もう少し様子を見てからだ」

と言うように、キャリアプランが明確にされていないのも日本企業の特徴。

そこを、中国の方含め外国人は嫌うと言います。

明確なキャリアプランを示してほしいのですよね。

 

そういった問題が、インドにも出始めているというのでしょうか。

 

インドは、中国に続くアジア市場として注目されています。

今は中国の時代ですが、数十年後にはインドの時代が来ると言われていますし。

とは言え、実際にインドに進出している方の話を聞くと、まだまだインフラが整っていないので、もう少し時間がかかるとはおっしゃっていましたが。

 

実際、中国に比べ、インドに進出している日経企業は10分の1くらいとも聞きます。

まだ、数千社しか進出していないのですよね。

 

歴史は繰り返すと言います。

日本で起きた事は、中国でも起きる可能性が高く、そしてインドにおいても同じことが言えそうです。

 

今後の動きに注目ですよね。

 

 

尾登 正幸

ブログ著者:尾登 正幸

埼玉県出身。大学3年生の就職活動期に “人生を楽しむことを手伝える” 仕事での起業を決意。同じ志を持つ仲間と3年後の会社設立を目標として共有し、ノウハウを得るため2006年に人材派遣会社に就職した。2008年12月、仲間と共にRAYERED(株)を設立し、2010年からは代表取締役に就任。ビジョンの共有を核とする人事コンサルティングや、人事適性検査にフィードバックを付けるサービスはリピーターが多い。人事適性検査をフル活用した独自のスキームにより、企業と人のベスト・マッチングを提供している。

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