苦境のNEC、シャープ、ソニー、電機1万人削減、受け皿は中国
9月5日 日経産業新聞からの抜粋+一部編集です。
———-
苦境のNEC、シャープ、ソニー、電機1万人削減、受け皿は中国
日本の電機・IT(情報技術)業界が人材の草刈り場になっている。
NECやシャープ、ソニーが相次ぎリストラ策を発表。
国内で計1万人を超す人材が各社を去るが、その受け皿として採用を積極化しているのが中国企業だ。
景気情勢が厳しい中、再就職を目指す人には干天の慈雨な半面、日本企業からは人材とともに技術や顧客基盤が離れつつある。
円高や構造改革の遅れを背景に、電機大手で相次ぐリストラ策。
NECは先月末、早期退職の応募を締め切った。
結果は国内で2393人が応募。
削減幅は海外を含め5300人と当初の目標達成にメドを付けた。
NECの場合、早期退職の応募資格は40歳以上で、総務などバックオフィス部門が中心。
将来を担う若手や、収益の柱であるSE(システム技術者)、営業部門は対象外だ。
一挙に人材や技術が流出するのを防ぐ狙いだが、内情を探ると異なる実態が浮かび上がる。
「え、君も辞めてたの」――。
都内のIT関連イベント。
昨年末に8年勤めたNECを辞め、米系のIT会社に転職した山下徹さん(仮名、31)は驚いた。
去年までNECで机を並べていた同僚2人が、いずれも他社のユニホームで展示技術を売り込んでいたからだ。
転職した山下さんは、NEC時代の顧客とのパイプも役立てながら好業績を上げ、年収は倍に増えた。
早期退職の舞台裏で、会社に対して強く働く遠心力――。
NECにとっては優秀な人材を失っただけでなく、顧客基盤も弱めたことになる。
NECだけではない。
今春以降、ソニーやシャープなど「デジタル敗戦」組の人員削減の発表が相次いだ。
電気機器産業のリストラ発表件数は1~7月で15件と、業種別2位の小売業(4件)などに比べ突出している。
IT・電機分野の転職市場はかなり厳しいと思いきや実態は違う。
最近では引く手あまたなのだ。
通信機器や携帯電話メーカーの華為技術(ファーウェイ、広東省)。
東京・大手町にある日本法人の本社では、週に1度のペースで「入社式」が開かれる。
2005年に20人だった日本法人の社員数は今では約590人。
今年もさらに100人ほど増やす計画だ。
NECや日立製作所も含め国内企業からの転職者が、入社式を通じて毎週にように中途入社する。
華為技術の特許の国際取得件数は08年に世界首位で、11年も3位。
技術力や低価格を武器に世界各国で存在感を高めている。
欧米の政府や企業との摩擦も存在感の表れだ。
ただ日本国内では「中国メーカー」の負のイメージもあり、NTTグループなど主要顧客になかなか食い込めなかった。
「最近は中途採用でNTTとのパイプを持つ人材を積極採用している。
その意味でNECの通信担当者などは最適」(人材派遣会社幹部)。
電電ファミリーの長男格としてNTTに食い込んできたNECなどが草刈り場になっているという。
NTTドコモが28日に発表したスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)の秋モデルの新商品では、初めて華為技術製が採用された。
電源を入れて5秒で起動する点など「技術力を評価した」(ドコモ幹部)が、華為の人材戦略が威力を発揮した側面もあるだろう。
華為技術以外の中国企業では、パソコン世界2位のレノボグループの日本法人がやはり毎週のように「入社式」を開催。
通信機器の中興通訊(ZTE)も
「日本の通信会社と接点がある営業要員を常に募集している」(採用担当者)
という。
技術流出の懸念はあるが、働き手には中国企業も貴重な雇用主。
ある中国系に転職した40代男性は
「政治的対立や福利厚生など不安はあるが、仕事はスピーディー。
何より成長しているという活気がある」
と話す
米国でもヒューレット・パッカード(HP)などITの老舗で人員削減は日常的に起きている。
だが、流出した人材がグーグルやフェイスブックなど新興企業に合流し、新しい活力を生む循環がある 。
日本大学の土肥一史教授は
「日本ではそうした受け皿がない。
今の人材流出は長い目で国力の低下につながりかねない」
と危惧する。
とはいえ、韓国、台湾勢に続き、中国勢の急速な台頭をとめようがないのも事実。
日本の地盤沈下がもたらした人材流動化は、日本企業にグローバル時代の発想の転換を迫っているようにも見える。
———-
人員削減というよりも、今回は人員「流出」という方がピンとくるでしょうか。
日本の優秀な技術者達が、海外に流れているのですよね。
最近では特に顕著になっているようです。
日本のメーカー、頑張ってほしいものです。