改正労働契約法、来月4月施行

人事ニュース

9月24日 日本経済新聞からの抜粋+一部編集です。

 

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改正労働契約法、来年4月施行、有期雇用者の保護道半ば、到達前に雇い止めも

 

 

契約社員やパートタイマーなどの雇用安定を促す改正労働契約法が来年4月に施行する予定だ。

同じ職場で5年を超えて働く人を対象に、本人が希望すれば正社員と同じように期限の定めのない雇用に切り替えるよう企業に義務付けることなどが柱だ。

一方で、新しいルールが契約社員らの保護につながるのか不透明との指摘も目立つ。

 

パートや契約社員のように3カ月、1年といった期間を決めて働く労働契約が大きな問題となったのは、2008年のリーマン・ショックがきっかけだ。

企業業績が急速に悪化し、契約社員などとの契約を更新しない「雇い止め」が続発。

契約更新を期待していた労働者を何らかの形で保護すべきだとの議論が急速に広がった。

 

 

◇就業規則に課題

 

法律上、有期労働契約については最長3年までという規則しか存在せず、繰り返し更新して長期間働く場合についての具体的な保護ルールはなかった。

そこで改正法では、同じ職場で5年を超えて働く契約・パート社員などは、企業に申し出れば正社員と同じように期間の定めのない雇用形態に転換できる仕組みを取り入れた。

長期間、安心して働ける機会を確保するのが目的だ。

 

有期労働契約を何回も更新してずっと働いている場合は、簡単には雇い止めができないという判例で確立したルールも導入。

有期労働社員と正社員との間で職務内容や福利厚生などの労働条件で不合理な待遇格差を設けることも禁じている。

 

今回の改正は施行後の労働契約が対象だ。

そのため、期間の定めのない労働契約を実際に申し込めるようになるのは18年度以降になる。

 

では、法改正を受けて、現場でどのような問題が起きそうなのか。

 

一つは、勤続5年に達する前に雇い止めが増える可能性だ。

雇用期間が終わる時期が分かっているからこそ、企業は仕事の繁閑に合わせて契約社員らを活用している側面がある。

期間の定めがない契約になれば労働力の調整がしにくくなる。

 

企業は自由度を確保しようと

「通算で5年以内とする契約が増えそう」(労務問題に詳しい田中勇気弁護士)

という。

 

もう一つは、期間の定めのない雇用に切り替わった場合の労働条件がどうなるかだ。

正社員と同じになると思いがちだが、基本的には有期雇用のときの労働条件をそのまま引き継ぐ。

一般に定年まで働けると約束されるが、正社員になれるわけではない。

 

有期労働契約の場合、正社員と異なり、職種や職務、勤務場所、勤務時間などが決まっている場合が多い。

期間の定めをなくした場合、会社側がこうした条件の変更を求める可能性もある。

 

田中弁護士は

「転勤できるかどうかが企業も社員にとっても期間の定めのない契約に切り替える際の重要な判断材料となる」

と指摘。

 

思わぬトラブルになる恐れがありそうだ。

企業にとって就業規則の整備も課題になる。

 

労働法に詳しい今津幸子弁護士は

「就業規則の内容や適用対象者を明確にしたり、期間の定めのない雇用転換後の非正規社員向けに新たな規定を設けたりすべきだ」

と話す。

 

就業規則が不十分だと、期間の定めのない契約社員へのルール適用があいまいになり、労働条件などを巡って問題が生じかねない。

 

 

◇実効性を疑問視

 

今回の改正は、正社員と契約社員らとの間に労働条件の不合理な違いを禁ずるルールも盛り込んだが、実効性を疑問視する声もある。

厚生労働省によると、不合理な格差のある労働条件は無効としているが、何が不合理なのかはっきりしていない。

そのうえ不合理な労働条件を定めている企業に対する罰則もない。

 

新しいルールは契約社員などの待遇を正社員に近づけるのが目的で、常に同じ扱いを求めているわけではない。

「契約社員らが誤解したり納得しなかったりすれば、トラブルが起きるリスクは残る」

(みずほ総合研究所)。

契約社員が労働条件の格差で損害を被ったとして会社を訴えることはできるが、立証責任は訴えた社員側にあり、訴訟負担は重い。

 

改正法の趣旨がどこまで実現するのか不透明な面は大きい。

非正規社員が職場の第一線を支える会社が増えるなか、新ルールの趣旨を理解して働く人の力を引き出す環境をきちんと整えていかなければ、企業自身が厳しいグローバル競争を生き残れないのも確かだろう。

 

今回の改正労働契約法が適用となるのは、契約社員やパートタイマー、人材派遣会社の社員となり派遣先の企業の指示で働く派遣社員などが対象だ。

いずれも期間の定めのある契約条件で働いており、定年までフルタイムで勤務する前提の正社員に対し、非正規社員と呼ばれる。

 

厚生労働省が2011年にまとめた「有期労働契約に関する実態調査(事業所調査)」によると、有期契約社員の勤続年数に上限を設けている企業は11・7%にとどまる。

一方で実際の勤続年数が5年を超える契約社員のいる企業は36%に達し、このうち10年超も10・7%あった。

新ルールになれば、対応を迫られる企業は少なくない。

 

有期契約の社員を活用しているのは製造業や小売業が目立つ。

大手電機メーカーなどでは5年以内の契約にするといった対策を考えるとの声がある。

イトーヨーカ堂では正社員を減らしパート社員を大幅に増やす方針。

東日本旅客鉄道のように契約社員を正社員に登用する制度をすでに導入している会社もある。

企業によって新ルールへの対応はばらつきそうだ。

 

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人事戦略に直接かかわるという事もあり、注目度の高い改正労働契約法。

今後の動きに注目です。

 

 

 

尾登 正幸

ブログ著者:尾登 正幸

埼玉県出身。大学3年生の就職活動期に “人生を楽しむことを手伝える” 仕事での起業を決意。同じ志を持つ仲間と3年後の会社設立を目標として共有し、ノウハウを得るため2006年に人材派遣会社に就職した。2008年12月、仲間と共にRAYERED(株)を設立し、2010年からは代表取締役に就任。ビジョンの共有を核とする人事コンサルティングや、人事適性検査にフィードバックを付けるサービスはリピーターが多い。人事適性検査をフル活用した独自のスキームにより、企業と人のベスト・マッチングを提供している。

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